エルゴポックの月形ショルダー

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【経年変化】エルゴポックのワキシングレザーショルダー【13年愛用】

2021年2月6日

こんにちは、物欲紳士です

今回は私が13年に渡って愛用している、エルゴポック月形ショルダーについて書きたい。

エルゴポックのワキシングレザーショルダー


残念ながらこの商品は現行製品のラインナップには既に存在しないけど、素材の「ワキシングレザー」は、現在もエルゴポック製品のラインナップの中核となっている。

エルゴポックのワキシングレザーを長年愛用した上での経年変化の記録としても、本記事を見ていただければと思う。
経年変化(エイジング)についてのみ知りたい方は、記事途中の「エルゴポックの定番素材(ワキシングレザー)の経年変化」以降を参照いただきたい。記事下部へ移動

ブランド(エルゴポック)について

エルゴポック(Hergopoch)は、日本の鞄メーカー、(株)キヨモトが運営するバッグブランド。
このブランドのキーワードは「日本製」という点。
日本の職人の確かな技術や、日本人の感性や鞄の使い方に寄り添った商品展開・デザイン提案を強みとするブランドだ。

1点めの職人の技術に関しては、例えば縫製の品質の高さにそれが現れている。
縫製の仕上げの綺麗さ(ステッチの正確さや縫い始め・終わりの処理の美しさ)は、「少し高め〜同価格帯」のいわゆる「実用的な価格帯の海外バッグブランド」と比較すると、明らかに優れていると感じる。

本品(左)と、やや高価格帯(10万円くらい)の某海外ブランドのブリーフケース(右)を比較。
ステッチを見ると、エルゴポック(右)のステッチ(縦線)は革のエッジとの距離が均等で、糸の終端(写真上部)の処理も綺麗。
海外品(右)はステッチの正確性も、糸の処理の綺麗さも1ランク落ちるという印象。

率直に言ってバッグの場合、特に強度が必要な箇所(例えばハンドルやストラップの付け根部分などの荷重がかかる部分)以外は、「縫製の品質」は機能性や耐久性に直結する部分ではない。
言い換えると縫製の見栄えというのは、多くの場合は単なる見た目の問題ではある。
が、エルゴポックの製品からは、このように「一見しただけでは違いに気が付かない人も多く、売り上げに影響しなさそうな箇所」にも手を抜かないという、「拘り」が感じられる。

高価であるか否かに関わらず「『プライドやポリシー』があって、製品からそれらを感じられるモノ」というのは、愛用していて気分がいい。
なので、こうした「拘り」が感じられるのは、否応なしに好感度が上がってしまうポイントだ。

また、エルゴポックの商品企画・提案について感じるのは、筆者のような「一般的な日本人」の鞄の使い方やデザインに対するニーズ・嗜好を理解しており、それらに根ざした商品提案をしているという点

この点について一般に「王道ブランド」と評価されているのは、あの吉田カバンということになるだろう。

エルゴポックの商品展開からも、吉田カバンのそれと似たような「日本人の価値観や審美眼、現実の生活に根ざした素朴さ」が感じられる。

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今回のバッグ(月形ショルダー)について

今回のバッグ(月形ショルダー)は、ブランドの立ち上げ初期にラインナップされていたモデル。

残念ながら最近は本ブランドも含め、新品で月型のショルダーバッグを購入できるブランドがほとんどなくなってしまった…。下記ではこのタイプのバッグが優れている点と、欠点(なぜ製品としてメジャーでなくなったのか?)について書いてみたい。

月形ショルダーのメリット

なかなか新品で見ることができなくなった月形ショルダーだけれど、

メリット

背負ったときの体へのフィット感
定番のカジュアルアイテムとの、コーディネートの相性

の2点を両立させていて、とても優れたデザインだったと思っている。

メリット1:背負った時の、体へのフィット感の高さ

このタイプのバッグは背負った時のフィット感が高く、荷物の重量の割りには軽く感じられる点が魅力。

上記には2点秘密がある。それは独特の形状による重心バランスの良さと、ショルダーベルトの構造に起因する高いフィット性にある。

独特の形状による、重心バランスの良さ

月形の本体形状は、(現在はそうでもないけど)15年くらい前のショルダーバッグにはなかなかなくて、結構独特な形状だった。

この形状だと、荷物を出し入れしたり背負う過程で、内容物が本体の中心方向に寄ることになる。
結果的に荷物を含めたバッグの重心が中央に寄り、左右のストラップの荷重バランスが安定する(重心が左右に偏りづらい)というメリットがある。

ショルダーベルトの構造に起因する、高いフィット感

ショルダーベルトは、バッグ本体に対して「円形の金属部品(カン)で取り付く」という、少し変わった構造になっている。

本品のショルダーストラップ取付部(左・中)と、一般的なショルダーバッグ(右)の比較。
このバッグは「ストラップ終端が丸形のカンで取り付く構造」で、ストラップ根元に可動域があるのが特徴。

これは「ショルダーベルトと本体との角度」(本体からのベルトの出方)が、背負う人の体格やショルダーベルトの長さに応じて変わる構造。
よくあるショルダーバッグの構造と比較すると、断然フィット感が高い

昨今の小型ボディーバッグでは一般的な構造だと思うけど、15年くらい前はあまり見慣れない構造だった。

メリット2:カジュアルの定番アイテムとの相性の良さ

このバッグの「フィット感」を裏付ける構造は、最近はボディーバッグ等に受け継がれているけれど、ボディーバッグなどは(ボリューム感的に)一部の定番カジュアルアイテムに対しては、相性がイマイチだと思う。

昨今のモダン&カジュアルなボディーバッグとは異なり、古典的なカジュアルアイテムとも相性が良いボリューム感が、このスタイルのバッグの魅力。

例えば、上の写真のような「バブアーのビデイル」や「バラクータのG9」。
このようなアイテムに合わせるには、本品のようにモダンすぎず、適度にボリューム感のあるバッグが相性が良い。

「機能性があり、かつ古典的な定番アイテムにも合う」というバランス感覚が、月形のショルダーバッグの良さだと感じている。

月形ショルダーのデメリット

では、上記のような良さのある月形ショルダーが、なぜ廃れてしまったのか?なのだけれど、これには下記2点の理由があるかなと考えている。

デメリット

「鞄の使い方」のニーズに対して、容量が中途半端
見た目からは「機能性」を理解しづらいデザイン

デメリット1:「鞄の使い方」のニーズに対して、中途半端な容量

最も大きな要因だと思うのはこの点。

現代人の鞄の使い方は、「ポケットに入りきらないものを持ち歩く」というお散歩バッグ的な用途と、「ビジネス用の書類・パソコンや子育てアイテムなど、本格的にモノを持ち歩く」というニーズに2分化している。
ボディーバッグやクラッチバッグは前者、ブリーフケースやトートバッグ、バックパック等は、基本的には後者に入る。

このような観点で捉えると、この鞄はお散歩バッグよりは容量があるけど、パソコンはおろか、A4の書類も折らないと入らない容量。
はっきり言うと、上記のようなバッグの容量に対する主なニーズに対しては、中途半端な容量だと言える。

デメリット2:見た目からは「機能性」を理解しづらいデザイン

また、前の項目で取り上げた「フィット感などの機能性」は、筆者自身が愛用した上での感想で、なかなかお店で手にとっただけで理解できるような、分かりやすい価値ではない点も挙げられるかもしれない。

例えばその後に流行した縦型のボディーバッグなどの方が、その機能性をより消費者にアピールしやすい形状で、言ってみれば「売りやすい」デザインであったことは想像に難くない。

まとめ:月形ショルダーバッグについて

月形のショルダーバッグは、10〜15年くらい前に流行したカバンの形状で、

容量が中途半端
機能性(フィット感の高さ)が分かりづらい

という理由からか、昨今は廃れてしまった。
しかし古典的なショルダーバッグと比較すると

・背負った時のフィット感が良く、荷物が軽く感じられる
・定番のカジュアルアイテムとも、デザイン上の相性が良い

上記の2点を兼ね備えている点は、最近のバッグには見られないメリット。個人的には復活を希望したい商品だ。

エルゴポックのワキシングレザーの経年変化

引き続き、このカバンに用いられている、エルゴポックの定番素材(ワキシングレザー)の経年変化(エイジング)について述べたい。

ワキシングレザーというのは、なめしの過程(「生物の生皮」を「製品の皮革」に加工する工程)で、ワックス(ロウ)を製品に含ませた革のこと。
馬具やバッグ、財布の材料として有名なブライドル・レザー(ホワイトハウス・コックスなどのブランドが用いていることで有名)も、このような皮革の一種だと言える。

(本ブランドの製品ではないけど)ベルトや財布に用いられているブライドルレザーも、ワキシングレザーの1種。

エルゴポックのワキシングレザーをエイジングさせる上で感じた「特徴」は、下記の2点だ。

ワキシングレザーのポイント

天候を気にすることがほぼ必要ない、耐水性の高さ
経年変化により、表情に「アジ」が出ることが期待できる

以下では、上記の2点について順に述べていきたい。

天候を気にする必要がない、耐水性の高さ

筆者の私物バッグは「キャメル系」の色味。

この系統の色は、ある意味で天然皮革の定番色で使いやすさがある一方、雨などによる水染みには弱い。
綺麗に経年変化させることが難しい色でもある。

この点、エルゴポックのワキシングレザーは購入当初の段階はワックス(油脂分)が多く含まれていることから、淡色系の色味であっても水染みには比較的強い
雨の日に濡らしてしまい、多数の水染みができるというストレスを感じずに済む。

なお、繰り返し雨の日に濡らしてしまうと、油脂分が抜けて革の表面がカサカサになる。
筆者は半年〜1年に1回、ロウ分を多く含む皮革用の栄養剤(ラナパー)でメンテしていた。

最近はラナパー以外でも似たようなメンテ用品はあるけど、ラナパーが最も無難に扱いやすいのでオススメ。

経年変化により「アジ」が出ることが期待できる

先ほど述べた通り、ロウ分を多く含んだ革で最も有名なのはブライドル・レザーだ。
ブライドル・レザーは強度や耐水性に優れた革で、さらに「外観の均質性とヤレにくさ」もある皮革。

言い換えると、ブライドル・レザーは「天然皮革らしい風合いがある」「経年変化でアジが出る」という側面は比較的弱い。
どちらかと言うと「長年、新品のような綺麗さを維持したい」という方にオススメの革だと思っている。

この点から言うと、このバッグに使われているワキシング・レザーは、耐水性というメリットがありつつ、「アジ」が出ることも期待できる革だ。

本体底部(写真右)、本体ポケット付近(写真左)は、繰り返し手を触れたために変色している

例えば上の写真。10年以上使用して、繰り返し手を触れた底部や入り口ポケット付近は、黒っぽく変色している。
みすぼらしいと言えなくもないけど、個人的にはいい感じだと思っていてお気に入り。

パーツ毎の経年変化の比較。左側のストラップ取付部付近の部品は表面が滑らかなのに対し、右側は自然のシボが入った状態に変化しているのが分かる。

左右のショルダーストラップの付け根付近は、左側は新品に近くて艶がある状態だが、繰り返しの屈曲が加わった右側は細かいシワが入っている
これは地シボと言って、型押し等の加工ではなく皮革そのものの屈曲によってできた、自然のシボ。
皮革自体の柔らかさや、屈曲が入りやすいバッグの設計によってできた経年変化だ。

率直に言って「高価な革」ではないとは思うけれども、永く使用でき、それに見合ったエイジングを堪能できるという意味で、価格を超えた価値のある素材だと思う。

エイジングに伴う「不満点」は?

褒めすぎた(?)感もあるので、不満点も書いておきたい。

エイジングではなく、単なる「ヤレ」ではないかと感じる部分
右:真鍮メッキ箇所のサビ、左:コットンライニングの汚れ

購入時の価格(確か3万円+税くらい)を考えると、革質やデザイン、縫製に関しては全く不満はない。
ただ革ではないけど、真鍮メッキパーツのサビや、内装(コットンライニング)の汚れが目立つ点は不満に感じている。

価格帯を考えると致し方ないというか、妥当なクオリティだとしか言いようがないけど…。
欲を言えば金属パーツはステンレス、裏地は人工スエード等にして、汚れにくい/汚れが目立ちづらい仕様になっているベターではあると感じた。

エルゴポックのワキシングレザーの経年変化:まとめ

以上、エルゴポックの定番素材、ワキシングレザーの経年変化(エイジング)について、長々と書いてみた。

ポイントのまとめ

天候をほぼ気にする必要のない、耐水性の高さ
経年変化により、表情に「アジ」が出ることが期待できる
内装の素材(コットンのライニング)やメッキの真鍮パーツは、経年変化によってヤレ・錆が目立つ

コスト面の制約が多いはずの商品で、パーフェクトでない点もあるけれども、素材・製品群として価格を超えた価値があるのは確かなのでオススメだ

★ワキシングレザーのオススメ商品★

エルゴポックのワキシングレザーを使った商品の中で、オススメのもの(*個人的に欲しいもの)を挙げてみる。
カラーバリエーションが豊富だけど、筆者ならやっぱり淡色系を選ぶかな…。

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筆者は持ってない縦型ショルダー。
この形のバッグは、やっぱり人気。カジュアルなお散歩にはピッタリで、筆者も欲しい1品。
 

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